Seventh Scope

ファッションコラム
ファッションのことパターン(型紙)のことを
第七企画の切り口で考えてみます。

2017年09月09日

ファッション離れの現実

 
「若者の○○離れ」などと言う言葉が
世間で聞かれるようになって久しいと思う。

「若者の○○離れ」などと言う言葉が
世間で聞かれるようになって久しいと思う。
もっとも顕著なものとして「車離れ」が言われるが
他にも「音楽離れ」や「スキー・スノボ離れ」など
様々な分野から若者が離れて行っているようである。
 
残念ながら我々の生業である
ファッションからも若者が離れていると
業界内では囁かれていたりする。
しかし、考えてみると
「ファッションに興味がありますか?」と
今の若者に訊いてみたら
大抵の人は「ある」と答えるんではないだろうか。
今も昔も、若者は自分の身なりに
一定の関心を持つものと考える方が自然だろう。
勿論、服装に全く無頓着な人も中にはいるだろうが
おそらく多数派ではないと思う。
 
ファッション業界で「若者離れ」が言われているのは
単純に若い人向けの服があまり売れていないからだろう。
他にも最近売れなくなったものとして
車ほどの高額なもの以外にも
本や雑誌、CDなど多数あると思うが
それらが売れなくなった理由として
「今の若い人はスマートフォンなんかの
 通信料にお金が掛かるから他のものをあまり買えない」
と、言ったある種の言い訳を聞くことがある。
しかしこれも考えてみると
かつての若者が雑誌や本
音楽関係やファッションに使っていたお金の全てが
今、通信費に使われているとは思いにくい。
やはり「もの」が売れなくなった理由を
この事のみに求めるのはかなり無理があるだろう。
 
筆者は仕事の関係で
服飾専門学校の学生や
服飾科や家政科の高校生と話をする機会がたまにある。
ここ数年、本当に驚かされるのだが
デザイン専攻の専門学校生に
「好きなデザイナーは?」と訊いても
一人のデザイナーの名前も出てこない事が
結構な頻度であるのである。
好きもなにも、そもそもデザイナーの名前自体を
一つも知らない学生さえいたりする。
筆者が専門学校生だったのは20年ほど前だが
我々の時にはこんな事はあり得なかったと思う。
 
確かに今ではファッションデザイナーがテレビに出ていたり
DCブランドがもてはやされていたりはしないが
一人くらい著名なデザイナーの名前を
知っていてもいいように思うのは筆者だけだろうか。
ちなみに今の専門学校生には
この「DCブランド」と言う言葉も通じない事が多い。
これくらいは知識として専門学校で
教えておくべきではないか、と不思議に思う。
勿論、学校ではちゃんと教えているのかもしれないが。
 
このようなファッションデザイナーを
一人も知らない服飾専門学生が
何にあこがれてその道を志したのか
筆者にはちょっと理解が難しい。
しかしこの事は我々の業界が
「若者をあこがれさせる何か」を失ってしまった証拠だと思う。
実際に服飾専門学校の学生数の減少は
少子化の影響以上のものがあるだろう。
 
「若者のファッション離れ」を考えた場合
若い人向けの服が売れにくくなったこと以上に
ファッション業界自体が
かつてより輝きや魅力を失ってしまった事を
我々は真摯に考えるべきではないかと
筆者自身も反省している。
 
しかし不思議な事であるが
服飾科の高校生と話をすると
非常によくデザイナーの名前やブランド名を知っていたりする。
毎年ある高校で服飾科の生徒相手に話をさせてもらうが
その知識にいつも驚かされる。
その高校生たちのファッションショーも見せてもらうが
専門学校のそれより
はるかにお金はかかっていないし粗削りではあるが
筆者は高校生たちのものの方が好感が持てる。
このあたりの事をある種の希望ととらえても
決して大げさではないだろう。