Seventh Scope

ファッションコラム
ファッションのことパターン(型紙)のことを
第七企画の切り口で考えてみます。

2017年10月28日

トレンドを作るのは誰か?

 
ファッション業界は長い間「トレンド」と言うものを
はき違えてきたのではないかとそう思う事がある…

ファッション業界において
「トレンド」と言う言葉を聞かなくなって
久しいと感じるのは筆者だけであろうか。
 
確かに服作りの現場に身を置く者の感覚として
アイテムや素材などに
一定の傾向があると感じる事は今でもある。
しかしそれを
いわゆる「トレンド」と呼べるかと言えば
おそらく違うであろう。
 
ある一つのアイテムが
爆発的にヒットするような現象があったのは
30年以上前までだったのかもしれない。
それ以降、ファッション業界は長い間
「トレンド」と言うものを
はき違えてきたのではないかと
そう思う事がある。
当然、自らの反省も含めて。
 
今では少なくなったと思うが
一昔前はファッション雑誌の表紙などで
「このシーズンの流行はこれ!」と言うような言葉を
よく目にしていたと思う。
テレビでもファッション通らしい芸能人が
「次のシーズンはこれが流行るよ」と言うような
発言をしている場面を見る事もあったと思う。
 
誤解を恐れず言えば
「流行やトレンドは作り手側が作るもの」と言った意識が
ファッション業界全体を覆っていたのではないかと思う。
はたして、「トレンド」とは誰が作るものなのか。
商品が店頭に並ぶ以前から
流行やトレンドが決まっている業界が
ファッションを除いて他にあるのだろうか。
 
あるデザインやスタイリングを
作り手側が考え、提案する事は
もちろんあって良いと思う。
いや、むしろあるべきだろう。
しかしその提案が受け入れられるかどうか
そのデザインなりが流行するかどうかを決めるのは
あくまで消費者の側だろう。
この至極当然の事を
ファッション業界は長い間
見誤ってきたと感じるのは筆者だけであろうか。
 
インターネットの普及で
我々が手にする情報はそれ以前より
圧倒的に多くなった。
しかもそれはテレビや雑誌のように一方方向のものではなく
発信される情報に対して
各自の意見や考えを表明できる双方向の形態で、である。
おそらくこの事が、いつからか叫ばれてきた
「価値観の多様化」を加速させたのだと思う。
そんな価値観の多様化した現代の市場において
昔ながらの「業界の押しつけ」ともとられかねない
「トレンド」が受け入れられるはずがないであろう事は
自明と言えば自明だろう。
最近のファッション業の不振は
こう言うところに原因があると考える事は
あながち間違いとも言えないのかも知れない。
 
しかしながら
市場の傾向に敏感であり過ぎる事が
自らの首を絞める結果になってしまうところも
ファッション業の難しい所ではあるのであろうが。